座敷の仏壇の上、下、布団入れの下、出窓の下の小さな押し入れ、出窓の上の天袋。
全部、開けて全てを出して… ズーーーと、開けたこともないし、何が入ってるのか、なんて興味もなかった。
全部、出した。 知ってるもの、エピを知ってるもの、知らないもの。 価値があるかもわからんもの。
古いもの。 祖父が戦時中に土に埋めて空襲を避けたかった3サイズのなんか骨董皿。 厳重に包んであった。
骨董好きだった祖父が買い求めたもの。
でも、祖父が亡くなって祖母がしょっちゅう骨董品屋を呼んで買い取らせたという話。
「馬の鞍がない」 と母が、帰省しては、叫んでいたのを思い出す。 「あーばーちゃんが売ったんだ」と子供心に思っていた。
故郷を離れている間に他人である祖母がその嫁入り先のものを売り放題してたらしい。
その中で、馬の鞍だけは売るな、と祖母に母が言ってたらしい。 祖母はその婚家の血筋は当然ない。 母はそこで生まれたから血筋がある。 だから、守ろうとする者、と売りたい祖母と対立する。
そんなこんなで、年月が流れ、わたしたちは…カオス。
一つ一つ包んであるものから出して、
「これはなんだ?」
「古伊万里があるとか言ってた、これ?」
「古伊万里?」
「みたいだけど、わからん」
「柿右衛門と書いてある」
「検索しよう」
「うーん、っぽいけど、わからん」
記憶にあるものや、初めて見るもの。 たちまち、座敷は包んであった布、紙、箱、木箱でカオスに。 マスクはこういう時にためになる。
大皿がやたら。
壺や花瓶、花器… 瓶。
壺はいかん。 ドラクエゲーマーは割りたくなる。
わけわかめ…
巻物は…そろっと広げて…
黒田如水… 貝原益軒…
韓信の股くぐり…これは小さい時からエピは聞いているけど無関心。
熊本城は出てきた。
良寛…
鎧兜はなかった。 これは飾ってあるのは何度も見た。 怖かった。 今は、大谷さーんがホームラン打つと被るけど、ああ言うのではなくリアルなのだから血を浴びてるのか… 知らんけど。
母が売ったのか…わからない。
で、これは祖父が求めたのだろうと思うけど、骨董好きはそこそこカモにされてるから、祖父もそれ?
もう、姉とぶつぶつ言いながら、ここズーーーーーーとカオスの中で、作業。 夫は、玄関前の植木を斬ってくれたり、重いものは運んでくれたり…
仏壇の上には固く巻かれて厳重にしてあったものを広げると祖父の表彰されたもの。
大正11年…1922年。 100年前のもの。
ふむ…なるほど…わからん…
祖父、と言ってもわたしが生まれるずっと前に亡くなったので写真でしか知らない。
母の母は長崎の軍人さんに嫁に行って別れて、子供を連れて帰ってきた。 その子を置いて…祖父に嫁入り。
その置いてきた子… 母の七五三の写真館での写真にちゃんと女学校の制服でおさまってる… 小さい母は、着物でおかっぱに花のかんざしをつけてる。
あ、戦前なのに七五三の写真、ちゃんとあるけど… 無い家があるんだね… へえ…どんな家なんだろうかねーーーーーー日本人かなーーーーー
6人も子供がいる祖父に『後妻業』として…(知らんけど、それを母に言ったらきっとそうだって)嫁に。
で、母が生まれ…母が言うには大きくなってみたら、年寄りの両親がいた、だって。
腹違いが6人、父親違いが一人。 そんなとこに生まれた日にゃ… カオス…
山高帽をかぶって、ステッキをもち、燕尾服。ハイカラさん? 戦前は長く、為替や配達もする結構大規模な特定郵便局をしていた。 子供の頃、母の里に帰省するとその名残の部屋があって面白かった。
で?これはなんだ?郵政省からの表彰状が結構あった。 昭和3年。 菊の御紋。 大日本帝國…え…と。以下…なるほど…わからん。
朱の屠蘇セットがあったので、 「また、屠蘇器、一体いくつ」 と思ってみたら、郵政省からのなんらかの奨励?でもらったもの。
勲章は出てきたし。 そこそこ、祖父は頑張ってたんだな、と思いを馳せた。 この祖父に、母も知らない兄がいて、19歳で朝鮮半島の元山港で亡くなっていたのは原戸籍をとって知った。 原戸籍には祖父に家督が譲られていた。
日清戦争の翌年に亡くなり、それがちゃんと地元に知らされ、戸籍に亡くなった日付と場所も書いてあるって…
日本、すごいーーーーーー 祖父の兄は…風来坊?
支那事変…支那事変は昭和12年。日本は一気に戦争へ… 昭和16年から20年。
戦争はお金がかかる。
で、祖父がお金を寄付したん?
これは政府のマークやね…今もこれ。 当時は、戦時国債も発行してた。 夫の実家から、戦車の印刷がしてある戦時国債の券がいっぱい発見。 これは当時、画像をアップしたと思う。
とってあったんだ。 うちの母が昔、言ってたのは祖父が敗戦した時に「ああ、パーになった」と紙切れを庭にまいたとか… それ戦時国債券だったのかな…
こういう家が当時、ごまんとあった。
戦時中は、金属類や宝石類も放出させられたそうな。
あの戦争のことを語るには知らなすぎるけど…
「戦争を避けられなかったのか」
なーんて、バカなことを言うつもりはない。 アメリカ様にロックオンされて回避できるわけがないわ。
雑談しながら姉とせっせと…
「これ何?」
「わからん」
「なんじゃこりゃ」
「わからん、腹立つわ、この紐の括りかた、ハサミで切ったれ」
夫が「死んでも娘たちに悪態をつかれてる」と感想。
そんなこんなで、カオスの中で、作業は続く…
暑くなるまでに早く…
いや、もう十分暑いけん…
こわいーーーーーー
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